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1:幸秀
雨の中、作業着姿の男たちが道を急ぐ。
彼らは1軒のアパートにたどり着くと、玄関の戸を開けて続々と中に入っていった。
「おい、大家はおるか!」
男たちの代表が、太く低い声で怒鳴りながら部屋のドアを叩く。
すると、中からうんざりした顔の大家が顔を出した。
「またあんたらか…今度は何だ」
「あんたもわかっとるじゃろ、ヤツのことじゃ! やめェ言うたのに廊下で魚焼きやがって、火事になるところやったんぞ!」
「…わかった、ちゃんときつく言っておく。だから騒がんでくれ…周りの目もある」
大家は話を終わらせにかかる。
しかし、代表はそれを受け入れない。
「のう大家、ヤツを出て行かすわけにはいかんのか? わしら、あそこには帰って寝るだけなんじゃ。それだけできればいいんじゃ。なのにヤツがめちゃくちゃやるもんじゃからそれもできん!」
彼が直訴に至った理由を言い放つと、他の者たちもそうだそうだと騒ぐ。
その様子を見た大家は、不満げに顔を歪めた後で部屋から出てきた。
「わしも今から行こう」
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