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すると猫たちは喜んで飛びつき、それを食べ始めた。
「ふふっ…ふふふっ」
一生懸命食べる猫たちを見ながら、幸秀は笑顔を浮かべる。
彼はそれからも、魚を焼いては猫たちに与え続けた。
大家は不思議に思っていた。
幸秀の奇行が、ある時からぴたりと止んだのだ。
(何があった?)
平和な日々が続くのは嬉しい。しかし今までが今までだっただけに、平和が過ぎると逆に不安になる。彼は様子を見に行った。
「…ん?」
日陰荘と隣家との間で、猫がくつろいでいる。
窓からは幸秀が笑顔をのぞかせていた。
(もしかしたら…)
彼の奇行が収まったのは猫のおかげかもしれない。大家はそう考えた。
(このまま大人しく過ごしてくれれば助かるんだが)
言葉は心配げだったが、その表情は嬉しそうだった。
彼は幸秀に声をかけることなくその場を離れる。帰宅した後で、とてもうまい酒を飲んだ。
それから2ヶ月ほどたったある日の夜。
日陰荘に、絶叫と笑い声が響き渡った。
「ギィヤァアアアアアアアアアアアアアッ!」
「ぐひゃっ! ぐひゃひゃひゃあっ!」
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