2:凶行

3/5
前へ
/33ページ
次へ
 笑ったのは幸秀だった。住んでいる4号室から、何かを手に持ち飛び出した。  ドアを開け放したまま廊下を斜めに渡り、誰も住んでいない13号室のドア前に陣取る。  そこから4号室へ、らんらんと輝く目を向けた。 「ほらぁ早く来い! 早く来いよぉ!」  幸秀が楽しげに言うと、4号室から何かが這いずって出てくる。 「ギッ…ギィイッ…!」  それは奇怪な声をあげながら、幸秀がいる13号室へ向かう。  体のそこかしこから流れ出す体液は廊下を真っ赤に濡らし、這いずりの跡を作り出していた。 「ナメクジだ、ナメクジ!」  幸秀は何かを片手で抱えながら、奇怪な声の主を指差す。 「お前猫のクセに、ナメクジみたいだぞぉおおお! ぎゃはははははははっ!」  廊下を這いずる何か。  それは、四肢を切断された猫だった。  幸秀が猫に餌をやっていたのは、単に仲良くするためではない。  部屋に招き入れ、虐待を行うためだったのだ。 「いっそげ、いっそげ」  彼は指差していた右手を引っ込めると、左手一本で抱えていた何かにその手を添える。  それは子猫だった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加