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笑ったのは幸秀だった。住んでいる4号室から、何かを手に持ち飛び出した。
ドアを開け放したまま廊下を斜めに渡り、誰も住んでいない13号室のドア前に陣取る。
そこから4号室へ、らんらんと輝く目を向けた。
「ほらぁ早く来い! 早く来いよぉ!」
幸秀が楽しげに言うと、4号室から何かが這いずって出てくる。
「ギッ…ギィイッ…!」
それは奇怪な声をあげながら、幸秀がいる13号室へ向かう。
体のそこかしこから流れ出す体液は廊下を真っ赤に濡らし、這いずりの跡を作り出していた。
「ナメクジだ、ナメクジ!」
幸秀は何かを片手で抱えながら、奇怪な声の主を指差す。
「お前猫のクセに、ナメクジみたいだぞぉおおお! ぎゃはははははははっ!」
廊下を這いずる何か。
それは、四肢を切断された猫だった。
幸秀が猫に餌をやっていたのは、単に仲良くするためではない。
部屋に招き入れ、虐待を行うためだったのだ。
「いっそげ、いっそげ」
彼は指差していた右手を引っ込めると、左手一本で抱えていた何かにその手を添える。
それは子猫だった。
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