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3:日陰荘の戦い
男の名は、拓馬陽堂 直親(たくまようどう なおちか)という。
明らかに普通ではないその名前は、本名ではなく仕事用の名である。
職名としては霊媒師が近いが、彼は単に人と霊とを媒介するのではない。
霊を鎮める者、言うなれば鎮魂師ともいうべき者だった。
直親は話を聞き終わると、大家にこう告げる。
「とにかく現場を見てみましょう」
「い…行くのか、あそこに」
大家は不安げに声を震わせる。相手の身を案じているのではなく、危険な場所に行くならひとりで行けと暗に訴えていた。
直親もそれを感じ取っている。
が、返す言葉は穏やかだった。
「中に入るのは私ひとりです。大家さんは建物の外で待っていてください」
「だ、大丈夫か…?」
「大丈夫です。工事の時だけ事故が起きるということは、霊がいたとしてもこの建物から出たくない霊ということです。安心していいと思います」
「わ、わかった。それなら…行こう」
大家はようやく日陰荘への案内を承諾した。
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