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ふたりはすぐに目的地へと向かう。晴れた空とは対照的に、大家の表情はどんよりと曇っていた。後に続く直親も特に言葉をかけたりはしなかったので、会話はほとんどなかった。
やがてふたりは日陰荘に到着する。
「ここが日陰荘だ…」
「じゃあここで待っていてください。もし誰か来たとしても、絶対に入れないでくださいね」
「う、うむ」
大家がうなずくのを確認した後で、直親は中に入っていった。
あの事件の後、幸秀は施設に行ったまま戻らなくなった。彼の親も、日陰荘よりそちらに閉じ込めておく方が確実だと考えたようである。
大家が負った借金に関しては、迷惑料ということで帳消しになった。しかし凄惨な事件で有名になった日陰荘に住もうとする者など、誰ひとりいなくなってしまった。
アパートのまま残しておいても家賃収入は見込めない。
そう考えた大家は、日陰荘を取り壊して大きな一軒家を作ろうと考えた。
心機一転する意味も込めて、行き場のない職人ではなくちゃんとした業者に頼んでみたのだが、工事は遅々として進まない。
謎の事故が相次いだのだ。
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