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業者もプロなので、報酬をもらう以上きちんと仕事をしたい。
しかし、血なまぐさい事件の現場で原因不明の事故が起きたという事実が、彼らを尻込みさせた。
悩みに悩んだ大家は、問題を解決するために奔走した。そして並み居る霊媒師たちの中からずば抜けて費用の安い直親を見つけ、白羽の矢を立てたのである。
「……」
直親は日陰荘の廊下を見つめる。
四肢を切断された状態でそこを這いずったという哀れな猫の血は、除去されてもうどこにも見えない。
除去後は掃除を全くしていないらしく、左右の端にホコリが積もっていた。
スニーカーを履いた直親の足が、4号室に向かう。
彼の格好は、霊媒師がよく着ている仰々しい和服などとは全く違っており、ポロシャツに作業ズボンというラフなものだった。
「…ここか」
直親は4号室前に到着する。右手でノブを回し、ドアを開けた。
閉じ込められていた空気が漏れ出す。カビやホコリ、そして血の混じった臭いが直親の嗅覚を刺激した。
と、彼の右目尻に小さな蜘蛛が現れる。それは体長5ミリほどで、厚みはなく肌にぴたりとくっついていた。
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