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肌に掘られた刺青のように見えるが、絵ではない。4つの目と8つの足をそれぞれ細かく動かし、体の正面を直親の足方向へ向ける。
「やはりここから…なのか?」
直親は尋ねる。その言葉は目元の蜘蛛に向けられていた。
蜘蛛はくるりと向きを変え、13号室がある方角を指し示す。
直親にもそれは伝わっているようで、彼は4号室のドアを開け放ったままそちらを見た。
「…これは…!」
今まで何もなかった廊下に、赤い道が浮かび上がる。
4号室と13号室をつなぐそれは、哀れな親猫が子猫を救うために這いずった跡だった。
「4で始まり13で終わる、か…和洋折衷の不吉さというわけだ」
直親は誰ともなくつぶやくと、赤い道を歩き始める。
途中まで来た時、目元の小さな蜘蛛が消えた。代わって両手の甲に、体長10センチほどの大きな蜘蛛が出現する。
”ンォオオオオオ…!”
13号室の向こうから、威嚇するような猫の鳴き声が聞こえてきた。
声を聞いた直親はつらそうに顔を歪める。
「無理、なのか」
両手を握りしめる。
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