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手の甲に浮かび上がった2匹の蜘蛛は、合計8つの目を迷いなく13号室に向けている。
「どうにもならないか…!」
直親は悔しげに言いながら、13号室のドアノブに手をかけた。
その頃、大家は日陰荘の外でやきもきしていた。
建物の方へ時折顔を向けたりしているが、直親が聞いた猫の声に気づく様子はない。
「大丈夫か、あの男…」
大家は不満げに声を漏らす。
「見た目からして全然『それ』っぽくないが…やっぱりもう少しちゃんとしたヤツに頼むべきだったか…?」
そこへ、制服を着た警官が自転車に乗ってやってきた。
「こんにちは」
警官は大家のそばで止まると、自転車を降りる。
人の良さそうな笑顔を浮かべながら、こんなことを尋ねてきた。
「何かお困りのようですが、どうかしましたか?」
「え? ああ、いや…別に」
「ここの方ですか?」
「ええ、大家です。おまわりさんこそどうかしたんですか? 職務質問なら、もっとふさわしいヤツがそこらにいくらでもいますよ」
「ああ、お気を悪くされたらすいません」
警官は苦笑しつつ謝ってみせる。
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