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他人の一歩手前というほど薄い関係だが裕福な家の子であり、大家は彼の親に金を借りていた。
幸秀の親は、返済を免除する代わりに息子を預かってくれと依頼してきた。そんなことでいいならと快諾した大家だが、問題を起こすばかりの幸秀を見て預かったことを後悔した。
返済免除の条件にするほどこの男に手を焼いていたのだと、その時になってようやく気づいた。
(金をすぐに返せん以上、コイツを追い出すことはできん。またすぐに問題を起こすだろうし、そうなればあの職人連中は出ていくだろう…)
家賃収入が減るのは痛い。
しかし返済免除がなくなるのはもっと痛い。
加えて、別の不安要素までもが首をもたげ始めていた。
(このあたりの物件はヤバい…そういう噂が広がってるらしい。クソッ)
前に日陰荘を出ていった元住人が、飲み屋でよからぬ噂を広げていると聞いた。
幸秀を原因とする話ならまぎれもない事実である。大家には、それを否定して回ることができない。
(一体どうすれば…!)
「カーカーカラス、ボケカラス~」
彼の苦労も知らず、本人は今もふざけ続けている。
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