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「ボケクソマヌケ、死ね死ねよーイェイ!」
(お前が死ね!)
大家の憎悪は募る一方だった。
(頭がおかしいなら、さっさと石でものどに詰まらせて死ね…! できれば外でな)
彼の不穏な願いが叶うことはない。
奇行ばかりの幸秀はしかし、自身に迫る危険に対してだけは冷静な判断力を発揮して、日々を好き勝手に過ごし続けた。
それから3日後。
大家に直訴してきた男たちの代表が、日陰荘を出ていった。
幸秀がバケツに溜めた小便を廊下にまいたことで、堪忍袋の緒が切れたのである。
その後も退去者が続出し、日陰荘の1階には幸秀以外誰も住まなくなった。
「ふっふ~ん、ふふっふ~」
住人の気配がなくなった廊下を、彼は嬉しそうに歩き回る。そのそばで、大家は小便の臭いを消すため連日掃除に追われた。
窓を開けずとも臭いを感じなくなった頃、幸秀は新たな奇行に及ぶ。
「カーカーカー! ボケがボケカラスー!」
夜中に大声で歌い始めたのだ。
日陰荘は2階建てであり、上階はまだ住人で埋まっていた。幸秀はそこへわざわざ上がり、歌いながら廊下を走り回った。
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