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2階の住人たちは怒りのままに彼を捕まえようとする。しかし日々の労働で疲れ切った職人と、体力の有り余った幸秀とでは勝負にならない。
「ぎゃーはははっ! ボケボケカラス―、顔真っ赤ー!」
彼はげらげら笑いながら日陰荘を飛び出し、大家のもとへ避難した。
幸秀に助けを求められれば、大家はかばうしかない。
「も、申し訳ない…こいつは頭が弱いんじゃ。どうか見逃してやって…」
「大家さん、ものには限度があると思うんですよ。あんたがそうやってかばうなら、俺たちも下にいた連中みたいに出ていくことになりますが…それでもいいんですか?」
2階に住む男たちの代表は、丁寧な口調の中に怒りを込めてそう言った。
しかし大家には何もできない。
「出ていくいかんはあんたらの勝手じゃ」
この言葉に男たちは呆れ、数週間後には2階に住む者もいなくなった。
「ぐふっ、ぐふふふっ」
自分以外誰もいなくなった日陰荘で、幸秀は嬉しそうに笑う。
「静かなお部屋ー、カラスはいないー、ボケが、ボケが、どっかいった! ふはっ」
幸秀は肉体労働者たちを見下していた。
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