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2:凶行
静けさを手に入れた幸秀は、機嫌よく毎日を過ごした。
それが影響してか、糞尿をまき散らしたり夜中に大声で歌うことはなくなった。
奇行が完全になくなったわけではない。ただその奇行も、掃除や苦情を聞くといった大がかりな後処理を必要としないものばかりだった。ようやく平和な日々が訪れたと、大家は胸をなでおろした。
しかし平和と退屈は紙一重である。幸秀の興味は別のものへと移っていた。
「ミィ、ミィ」
「んぉ?」
外から聞こえた鳴き声に、幸秀は顔をしかめる。
窓を開けて路地を見ると子猫がいた。
「……おっ」
しばらく眺めていると、親らしき猫が物陰から姿を現す。
明らかに警戒する目つきで、じっとにらみつけてきた。
「ふふ…」
幸秀は何かを思い立つ。窓を閉めると商店街へ出かけていった。
しばらくすると、彼は魚を買って帰ってくる。窓を開け、フライパンでそれを焼いた。
十分に匂いが拡散したところで外を確認する。
「きてるきてる」
猫の親子が来ていた。
彼は焼いた魚の身をほぐし、冷ましてから外に投げる。
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