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「ただいま……」
「おかえりなさい。唯人」
学校から帰宅した結人を出迎えたのは、母親だ。
「今日は、英語の小テストが返却されたんでしょう? 当然、満点だったわよね?」
そう言いながら、唯人に向けて手を差し出す。それは「テスト用紙を出せ」ということだ。
唯人はまだ靴すら脱いでいない。だが、それを言える雰囲気ではなかった。
唯人は鞄の中から、英語の小テストを取り出し、恐る恐ると母親に差し出した。
にこやかな笑みでテスト用紙を受け取った母親だが、点数を見た瞬間、目が飛び出しそうなほど、大きく目を見開いた。
「唯人。この点数はなに」
母の静かな、でも怒りを含んだ声色に、唯人は肩をビクつかせる。
「ほ、本来なら、答えは、合ってる、はずなんだ。でも」
「でも? 実際は間違ってるじゃない。だから、×がついているんでしょう!」
唯人はさらに体を縮こめる。
「どうしてあなたは、いつもそうなの!? なんで肝心な時に、失敗をするの!?」
母の金切り声に、唯人は俯き、目を強くつぶって耐える。
「いい!? 世の中で大事なのは、途中経過じゃなくて結果なの!! でも、あなたはいつも結果を出せない。本当に勉強してるの!?」
「し、してるよ。家でも、学校でもっ」
「口答えするんじゃない!!」
母親は唯人を力強く、突き飛ばした。唯人は体を、玄関の扉に打ち付ける。
「私が厳しくするのは、全部あなたのためなの! 将来、良い大学に行って、良い会社に就職するためなの! どうしてわかってくれないの!?」
「わ、わかってる。全部、わかってるよ……」
「それなら早く自分の部屋に行って、勉強しなさい!!」
「は、はい。ごめんなさい」
唯人は投げ捨てられた小テストを拾い、逃げるように、自分の部屋へ駆け込んだ。
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