ヴァンパイヤと神父くん

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月明かりが僕を照らす。 瞳を閉じれば心も落ち着いた。 だから、一人でも平気だったんだ。この広い教会に居ても平気だったんだ。 なのに、君が現れてから僕のすべてが変わった。 君の紅い瞳で見つめられる度に 白銀の髪が風で揺れる度に 君から眼を背けなくなって 一人が寂しく感じるようになった。 君は、太陽のような笑顔を僕に向ける。 その笑顔を見る度に 君の側に居たいと思った。 「ねぇ、ヴァン。」 「何、ルカ?」 君は、いつもと変わらず黒いパーカーを着て フードを被り微笑む。 「良い天気だね。」 僕もつられて微笑む。 「ヴァンパイヤにはつらい天気だけどな。」 「そうだね・・・」 ヴァンは、ヴァンパイヤだ。 でも血が苦手で血の代わりにトマトジュースをよく飲んでいる。 「そういえば、あいつらは?」 「あぁ・・・どこ行ったのかな。」 ヴァンの言うあいつらとは つい最近、一緒に住むことになった天使と悪魔のことだ。 「ただいま~神父くん」 「ただいま戻りました。神父さん」  「お帰り。二人とも頼んでいたものは買えたかい?」 「「もちろん!!」」 ヴァンは、僕たちの会話を不思議そうに聞いていた。 夜になり、教会には仮装をした子供たちがお菓子をもらいに来ていた。 「今日、ハロウィンだったんだな」 「忘れてたの?」 「まぁ・・・」 そう言いヴァンは、頬をかいた。 すべてのお菓子を配り終える頃。 ヴァンは、庭に置いてあるベンチに座りトマトジュースを飲んでいた。 「お疲れ様、ヴァン。」 「あぁ、もう終わったのか?」 「あぁ・・・うん、まぁね。まだ、片付けがあるけど。」 「なら、俺も戻って手伝うよ」 「ヴァン、あのさ・・・」 「何?」 「これ、一つ余ったから」 そう言って、僕はヴァンにラッピングされたクッキーを渡した。 「ありがとう・・・。」 ヴァンは照れながらそう言い戻って行った。 空を見上げると綺麗な月が浮かんでいる。 「今日は、人と人ならざる者たちが交わる日・・・か。」 そうかも・・・しれないね。 そろそろ、僕も戻ろう。 僕の居場所に・・・。
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