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「そんなことしてる暇あったら勉強しなよ。もしくは、合格祈願のおまじない探した方がいいってば」
「だってあたし、絶対落ちるんだもん。あたしにはわかってる!」
「自信満々で言うこっちゃないわ」
「やる気がない人間が合格するほど甘い世界じゃないってことくらい、あたしにだってわかってるもん。そこそこちゃんと勉強しても通らなかったら、お母さんだって諦めるでしょ。あたしは本当なら唯と同じ公立行きたいだから」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどさあ」
「それにね」
ずい、と顔を近づけてくる小鞠。せっかく可愛い顔をしているのに、そんなむすっと不機嫌な表情では非常にもったいない気がするのだが。
「仮に一緒に合格できても、同じクラスになれるとは限らないじゃん。バラバラになっちゃったら結局話す機会なんかなくなっちゃうでしょ。あたしそんなのやだもん。それより前にキセイジジツってやつを作っておかないと!」
既成事実、の意味を本当にわかっているのだろうか、この子は。
そもそも恋のおまじないで既成も事実もへったくれもないと思う。大体、おまじないはおまじないであって、本当に恋人同士になれることを保証するものではないはずである。
ただ、私は知っているのだ。こうなった小鞠は、テコでも譲らないし動かないということを。
「もう……とりあえず友達とかに聴いてみるけどさあ。見つからなくても怒らないでよね」
そしてそれがわかっているからといって、こうして引いてしまう私も。結局彼女を甘やかしているだけなのかもしれない。
「やったあ!ありがと唯、大好き!持つべきものは友達だよねぇ!」
「はいはい」
いくらこうして、派手に喜んでくれる小鞠に悪い気はしないとしても、である。
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