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自分で言うのもなんだが、友達の数は多い方だという自負がある。聞き込み、ができる相手だけは多く存在していた。それこそその日の放課後だけでも、十人以上の友達に話を訊くことができたのである。持つべきものは友達、というのはなるほど間違っていないのだろう。
今までさほど興味がなくて六年生まで知らなかったが、どうやらこの小学校にも七不思議なるものはあるらしい。結構な田舎のボロっちい小学校というだけあって、七不思議の内容も都会の小学校とは若干違いがあるようだった。
特に、校舎裏にある古井戸に纏わるおまじないなんて、東京の学校にはきっと存在しないに違いない。取り壊されず潰されず、戦前からあるような井戸が残ったままになっている学校なんてそうそうあるものでもないのだろう。
おまじないを調べて欲しい、と困りに頼まれた翌日の放課後。私達は揃って、校舎裏の井戸の前にやって来たのだった。
「此処で恋のおまじないをするの?唯」
好奇心旺盛な小鞠は、井戸の蓋をズラして中を覗きこんでいる。マジくっらーい!と何やら楽しげだ。足を滑らせて落ちるなよ、とハラハラしてしまう私である。
「恋の、っていうか。お願いを叶えてくれる井戸なんだって、そこ」
「ふーん?どんな願いでもいいの?」
「いいみたいだよ。この井戸、学校ができる前からあるんだってさ。で、オナカ様ってあやかし?が住んでるらしいんだよ」
「オナカ様?なんかお腹と田舎かけてるみたい。変な名前ー」
これから願いを叶えて貰おうというのに、随分と馬鹿にしたような態度である。そんなんで大丈夫なんだろうか、と私は呆れてしまう。なんせ、“オナカ様”はとても気まぐれな神様であるということで有名だというのだ。
この学校の七不思議の一つ、“オナカ様の井戸”。
やり方は単純明快。川原で拾ってきた小石を三つ井戸の中に投げ入れ、三回手を叩く。そして呪文を唱え、お願い事を言うのだ。
『オナカ様、オナカ様、あやかし様。
私の名前は●●です。
私はこの町の人間です。
どうか私のお願いを叶えてください。
捧げものはここにあります。
どうか私のお願いを聞き届けてください。
祈るものはここにおります。
私のお願いは○○です。
どうかよろしくお願いいたします』
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