プロローグ

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プロローグ

昔から人の感情を理解することが出来なかった。 楽しい、嬉しい、悲しい、寂しい、恥ずかしい、苛つく、苦しいなどといった喜怒哀楽を表現している人は周りにはたくさん居たのに俺には難しかった。 母はどっかの令息の金持ちに騙され俺を産み、ストレスの発散するためだけに俺に暴力を振ってきた。 暴力を振るわれようが、何されようが物心ついたときから痛いと思うだけで苦しいとか悲しいとかは思ったことはない。 暴力を受けても尚、表情を変えない子供。 傍から見れば異常だが、誰も俺のことを気にする人は居ない。 そんな日常を送っていた幼少期のある日、突然にあの人は俺の前にやって来た。 母を騙し、母を捨てた男。その男は俺の事を見るなり泣きそうな顔をして「ごめん、ごめんな」といい抱き締めてきた。 その後、母を見たことはない。 最後に見た母は誰かに手に輪っかのようなものを掛けられ、パンダの色をした車に乗せられていた。 その男は、俺の手を引っ張り大きい建物の中に連れていった。 そこには、見たことのない女の人と俺より年上の男の子が居た。 男は、これからは家族だと、女の人は母になり、男の子は兄だと言った。 だから俺は「はい」と返事をした。
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