2

1/1
前へ
/30ページ
次へ

2

1年くらい恋人がいなかったせいか、久しぶりの人とのスキンシップにどきどきしていた。 綺麗な景色も副社長のせいで、曖昧なものになってしまった。 「せっかくだし、海見に行こうよ」 副社長の方は全然気にしていない様子。 少しおちゃらけた顔をして、歩き出した。 フロアの方に入り、エスカレーターで下で降りた。 何も無い場所が広がりガラス越しのレインボーブリッジもまた綺麗なものだった。 「ここ、レインボーブリッジの見えるデイサービスみたいなコンセプトで、作れそうだよな。」 たしかに。 デイサービスにはもってこいの広さだった。 「でもここまでどうやって来るんですか?駐車場はたしかに近くにはあるけど、車椅子では無理そう...でも、一見食いついてくる人はいそうですがね」 レインボーブリッジの見えるデイサービス。の話で少し盛り上がった。 斬新、考え方が柔らかい。俺が言える立場ではないが斬新で柔軟という言葉が似合っているのは、きっと副社長に当てはまるんだろう。 こうやってふざけて、チャラいなりにも副社長になっただけのことはあるんだな。 お台場海浜公園まで歩いていると、俺のインスタを見ていた副社長が 「あのインスタの写真さ、有名な所なんだろ?1回行ってみたいと思ってたんだよねー!」 その写真とは鳥居が無数に並んでいて、海の見える神社だった。 高い鳥居の賽銭箱にお賽銭を投げ入れるといい事がある、という噂の場所だ。 「そうなんです!俺の地元からかなり離れてるんすけど、長めがめっちゃ最高で!」 俺はその話に興奮していた。その神社の有名な所は鳥居だけではなく、岩に打ち付けられる海の波が潮吹きに見えることから名付けられた竜宮の潮吹きが有名だったのだ。 「ね、ほんと綺麗だよね」 「そこの海なんですけど、くじらの潮吹きみたいな岩に波が当たると見られるのがあるんすよ!感動を覚えますよ!」 握りこぶしで、両腕をぶんぶん上下に振り回して語る俺に笑いながら対応してくれる。 「あはは、すごいところなんだねw」 おっと興奮してたら、海に着いてしまった。 真っ暗でよく見えないが、穏やかな波が壁に当たりパシャパシャと音を立てていた。 「なんか、夜の海って引き込まれますよねー」 「なんでだろうね、不思議な感じだよね」 そう言って、2人とも海の音に耳を傾けていた。 ゆっくりと時間が流れていく、最近の海はあまり磯の香りがしないなぁと思いながら海の風に体を任せていた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加