けいやく

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けいやく

恋をしているかりだろうか?副社長に会えるからなのか?15分も歩く道のりがとても早く感じた。 一一....ついた! 自動ドアの前に立ち、チャイムを鳴らす。 ピンポーン.... 「はいはーい」 ちょっと高めな返答の声にドキリとする。 副...いや、岡田さんだ。 「あ...お久しぶりです...」 ニコリと微笑む副社長に、さらに心臓が激しく動く。 「久しぶり、入ってー!」 自分の家に入れるかのように、手を広げて案内される。 「履歴書..持ってきました!これでいいですかね?」 封から取り出した履歴書を早速副社長に見せる。 名前、住所、いくつかの会社の書いてある履歴書にゆっくりと目を通している。 「ふむふむ...なんか、この履歴書の写真顔違うくない?笑」 なんて言っても俺は写真写りがとっても悪い。 それを指摘され少し、顔が赤くなるのを感じた。 「うううう、うるさいです!俺写真写り悪いんですもう見ないでください!」 履歴書の写真を手で隠し、副社長に向け両頬を膨らまし不機嫌な顔をする。 それを、面白がるように笑った。 「ごめん、ごめんwだって違いすぎて気になってw」 楽しい話を聞いて居たのかゆっくりと奥から社長夫人が出てきた。 「あっ、結城くん。今回はパートなってくれてありがとうねー!履歴書見せてねー」 「はい!よろしくお願いいたします」 社長夫人は気さくで綺麗な美人さんだ。 髪はやっぱ茶髪。社長夫人、茶橋 由佳(ちゃばし ゆか)年齢は不詳。 「わざわざこの時間に、お時間頂きすみませんでした。仕事してたらこの時間しか空いてなくて」 頭をゆっくりさげる。 「大丈夫よー。まだこの時間でも帰れないからねー」 じっくりと履歴書を見ている。 「なんで病院辞めたのー?」 「病院辞めたのは、患者に対応する時間が少なくて業務的になるのが嫌で...そもそも俺病院向いてなかったんすよ」 介護と言えども、病院の仕事は次々と舞い込んでくる。それに追われて患者さんとゆっくり話をする機会なんて少なかった。 俺は病院を辞め施設で働き出したら、施設での介護が向いていることに気づいた。 「そーよねー。なんだかんだ忙しいもんね。」 茶橋さんは履歴書を見ながら話をした。 「あんまりいい経歴持ってないので自慢出来る程じゃないんですよね、転々としてるし、、」 実際自慢出来るような経歴ではない、数年したら転職を繰り返して居たからだ。 下を向いてしまう俺を副社長は見ていた。 「そんなことない、だって数ヶ月で転職なんてざらだから、それに比べ結城くんの経歴は全然誇ってもいいものだよ」 副社長の何気ない一言に、俺は救われた気がした。
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