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「なっ、由佳。」 ....えっ?由佳?副社長は時々茶橋さんのことを呼び捨てにする。 どうやら、茶橋さんは副社長より年上なのだが... 恋人のような呼び方に、俺はチクンと心に痛みが走った。 なんだこの痛み。 「あっ...それより、他の各書類ありますか?」 話題を変えるように俺は、必死で話を逸らした。 「あっこの書類書いて欲しいのよー」 数枚の契約書がある。 「あっはい分かりました。」 「ここ座って書いていいから」 副社長に椅子を誘導される。 少し副社長の顔を見ると、ニコッと笑いかけてくれた。 「あっ...ありがとうございます!」 椅子を引き、ゆっくり座る。 とりあえず難しい書類では無さそうだ。 「保護者の名前も書いてもらいたい場所あるけど、それ結城くんが書いていいから。」 「はい!」 15分くらい掛け書類を描き終える。 その間、2人はまだデイサービスの仕事をしていた。 「できました。」 「はーい、じゃぁ、土曜からよろしくねー!」と茶橋さん。 それに被さるように 「よろしくぅー」 と副社長が言った。 そういえば、他のスタッフは帰ったのか? 「えっまだ、仕事するんすか?」 気になった。 2人きり?で仕事するんだ.... 「そーなんだよねー。まだ仕事山積み。ここに泊まること多いんだよね俺は。」 「私はあと数時間で帰るよー」 まぁ、2人は社長夫人、副社長だから当たり前のこと...なのか? 「おれ、少し結城くんを送ってきますねー」 副社長が、見送りにきてくれる。 「じゃぁ、土曜日お願いいたします」 と頭を下げ、帰ることにした。 少しの間2人きりに副社長となれる。少し喜んだ。 「今日はありがとねー」 高い部分の自動ドアのセンサーを副社長が触り開けてくれる。 「ありがとうございました。」 「また、LINEするから」 コソッと耳打ちしてくる。 また!おれ耳弱いの! 「まっ...!」 顔を真っ赤にし、耳を抑える。 無邪気な笑い方。つい許してしまう。 少し冷静になり、瞬き1つして副社長の顔をみた。 「では、失礼します。俺からもLINEしますね」 握手を1つ。 そして、手を振る。振り返してくれる副社長。 少し歩いてまた振り返る。 まだ俺を見てくれているようだ。 また、俺は一礼して振り返らずに歩みを進めた。
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