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『は?なんのこと?意味わからないんですけど』
絵文字もスタンプも使わずそれだけ。
夫のスマホにLINEが届く。
目線は私を避け、何やら文字を打っている。
返事がきた。
『とりあえず、彼女から手紙を預かったから読んでほしい』
私がLINEを見たことを確認すると、レターケースから茶色の封筒を持ってきて、私の前に置いた。
そして、部屋を出て行った。
あまりにも唐突なLINEの内容に、私は事態を飲み込めぬまま封筒を開いた。
手が震えていたのは寒いからだと、自分に言い聞かせながら。
【はじめまして。いえ、実は一度お見かけしたことはありますが。
ご主人とお付き合いさせていただいています、平良江美里といいます。今回、このようなお手紙をさしあげることになったのは、ご主人との間に赤ちゃんができたからです…】
え?なに?
お付き合いさせていただいて?
誰もそんなこと認めてないんだけど?
【奥様がいらっしゃることはわかっていましたが、私は伸一さんを愛してしまいました。そして伸一さんも私を愛してくれています。だから、この私に宿った命を産むことを認めていただきたいのです…】
なに?
認めるってなに?
認知するってこと?
それからも長々と手紙は続いた。
いかに自分と私の夫である伸一が愛し合っているか?それが綿々とつづられていて、読んでいて吐き気がしてきた。
『なにこれ!逃げないで説明して!!』
リビングから出て行った夫にLINEした。
本当は大声で叫びまくりたかったが、やっと寝た2人の子供を起こしたくなかった。
4歳と1歳の、まだ小さな子どもたち。
落ち着かないと。
私がしっかりしないと。
ぴろろん♬
『そういうことだから、許可して』
『何言ってるの?許可って何?いままで私は知らなかったんだから、私たち家族には迷惑をかけないから産ませてほしいというのなら、なんでわざわざ報告するの?』
返事がない。
夫は寝室にいて、鍵をかけている。
私は子どもたちと別の部屋で寝ているから、このまま朝まで出てこないつもりかもしれない。
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