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彼女からの返事
二日後。
仕事から帰った夫が言った。
「彼女は沖縄に帰って子どもを産む。でもその前に明日から一週間、彼女と暮らす。その後はもう彼女とは会わない」
「は?」
ただいまより先にその話。
言い終わると夫は二階に上がって、荷物をカバンに詰め始めた。
「パパ、どこか行くの?」
上の子がパパにまとわりついている。
「明日から一週間、出張だ。いい子にしてるんだぞ」
説明しながら頭を撫でている。
「一週間ていつ?お土産ある?」
「今日は6だから13になったら帰ってくるよ」
階段を降りてくる音がした。
「じゃ、そういうことだから」
パタンとドアを閉め、出て行った。
一週間?
おままごとでもするの?
会えなくなっても子どもを産むんだ
どうして?
どうして?
子どもを諦めれば付き合ってもいいのに…
わからない。
彼女は何故、私に手紙を書いてまで妊娠したことを伝えてきたのか?
何故、許可が欲しいと言ってきたのか?
許可ってなんのことなのか?
黙っていれば、私はなにも知らないままだった。
子どもができたから、別れてください
そうくるんじゃないの?普通。
離婚や慰謝料を求められたわけでもなく、ただ子どもを産ませて欲しいというだけの願い。
それほど愛してるということ?
苦労するのがわかっていても、もう伸一と会えなくなるのがわかっていても、子どもを産むという選択肢を取る、そんな彼女の気持ちがわからない。
「ママ、お腹すいた!」
「あ、そうだね、ご飯にしようね」
それでも。
このことは一生、誰にも言うまいと誓う。
この子たちには知られたくない。
そして、一週間後
夫は帰ってきた。
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