お仕置き

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「おっかしいな~? インキュバスなら尻尾があるはずなのに見つからない」  ランドルフが僕をベッドに寝かせ、シャツを捲し上げて背中に手をいれる。その間にベストのボタンを器用に外された。 「無いのは当たり前! だって僕はヴァンパイアだから!」  この後、ランドルフから何をされるのか知らなくてインキュバスじゃない証拠を見せようと必死だった。 「さては僕に見つからないように隠しているな?」   「隠してなんかない!」  マントを外してベストを脱ぐ、シャツのボタンを外し脱ぎ捨てればランドルフに向かって背中を向けた。 「ほら、ないでしょ?」  インキュバス特有の羽も無ければ尻尾もない。それなのにランドルフは疑い深くて下も脱げと言う。 「もう十分だろ!」 「脱げないってことは、やっぱりインキュバスかもしれないね」  明らかに挑発されていたのは分かっていたけどインキュバス扱いされたく無かったから、もうどうにでもなれっと勢いよくズボンを下ろす。 「トーマ……マトリョーシカ模様のかわいいパンツだね」 「あ……」  脱いでから今日、穿いていたパンツの柄を思い出した。白地に赤いマトリョーシカ模様が入ったトランクス。こんなタイミングで見られると思っていなかったのでめちゃくちゃ恥ずかしい。 「言っておくけど僕が買ったんじゃないよ! 弟からのプレゼントでもらったんだ」  恥ずかしくなり慌てて脱いだズボンでパンツを隠す。 「へぇ、トーマに弟がいるんだ。趣味いいね」  せっかく隠したのにランドルフに手首を掴まれどかされた。何気にランドルフの方が力が強くて、さっきから僕は押され気味だ。 「でも今日は脱いじゃおっか」  呆気なく簡単に脱がされて裸になった。普段マントとか色々着込んでいるからすごく寒いし、あまりにも無防備な姿で恥ずかしい。 「言っておくけど、罰はまだ終わってないから」  思い出したように言うランドルフが憎かった。 「そんなぁ~」  もう、これ以上裸になった僕にどうしろと言うのだ。涙目になって見つめれば、ランドルフはなぜか顔を赤くする。 「こっちにお尻向けて?」 「いいけど、なんで?」  僕はランドルフが今から何をするつもりなのか分からなかったけど、素直にお尻を向けた。 「セックスするから」 「……せっくす? 男同士なのに??」  セックス……というのは男女がするもので昔、茂みの中で人間の男女が入り交じっているのを見たことがある。ヴァンパイアは基本、ある儀式をして数を増やすから僕は興味が無かった。 「楽しいよ? きっと、トーマも大好きになる」  ランドルフの指が僕のお尻に入ってきた。その指は何かを塗ったのか、ぬめりがあってスムーズに行き来している。なんだか変な感覚だなぁ……とのんきに思っていたら、指の腹がある場所を掠めただけで身体がビクリと跳ねた。 「あっ! 今のっ何かへんっ……!」  ランドルフに訴えかけると嬉しそうに笑っている。この状況を1番楽しんでいた。 「うん、そこがいいんだよね。知ってる」  集中攻撃されれば僕は為す術もなく崩れ落ちる。同時に前も擦られて意識が落ちないようにベッドのシーツを必死に握りしめていた。しばらくして、じゅくじゅくになったお尻に指とは違う熱いものが当てられる。 「!」  まさかと思った時には遅くて僕の中に侵入してきた。ゆっくりと腰を沈めて占領し、お腹の中が別の意味でいっぱいになる。 「ヴァンパイアの処女もらっちゃった♡」  そう言って長い銀髪を耳にかきあげた。 「うそ……入った?」  自分の身体に何が起こったのか分からないまま、ランドルフは腰を前後に動かし始める。僕はさっき擦られた敏感な部分を何度も擦られて少しずつ快楽に落ちていった。 「ほら、言ってごらん。僕のことが大好きだから僕以外の血は吸いませんって」  突然、ランドルフの動きが止まって下半身がモヤモヤし始める。もじもじと腰を不器用に動かしても、思っていた刺激を感じることができなくて物足りない。 「ら、らんどるふのこと、がだいすき、だか、ら、らんどるふの血しか、のまないから、はやくいかせてくらさい……っ」 「よくできました。そっちの方が独占欲あっていいね」  ズンっとお腹に何かが来た。待ち望んでいた刺激がさっきよりも速いスピードで来たと思ったその瞬間、びゅるると勢いよく白濁が飛び出しお腹の中が温かくなる。 「アーーッッッ!」  血を吸い、吸われることが性行為だった僕は新たな性癖を手に入れた。ランドルフをチラリと見れば、僕の気持ちが伝わっているのかウインクを返される。  「さっきからいないと思ったら俺のベッドでヤるな! 寝れねぇじゃねぇか!!」  ランドルフが閉めた扉を開けて入って来たのはアーリン。僕とランドルフを見るなりパコンと手のひらで殴られる。……ランドルフは上手く避けていたけど。 「アーリン来るの遅いよー……」  アーリンのベッドの上で叩かれた頭を擦りながら文句を言った。 「なんだその言い方! 俺の方が被害者だっつーの!! 2人ともさっさと服を着て俺の部屋から出て行け!」  着の身着のまま追い出され僕とランドルフはお風呂に向かった。 ***  その1週間後、ヴァンパイアの生命力が強いのか抜かれた八重歯は、また生えてきた。そして、ランドルフが僕にキスした際に言った一言が『やっぱりトーマに八重歯が似合うね』……僕はとんでもない男に拾われてしまったに違いない。 (おわり)
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