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それから十年の月日が流れた…。
ああ、ストレージの中と理想郷計画はまだ着手も何もしていないし、永久保存状態だから、ただレッドストレージに異種族の数が大量に増えた程度だよ。
そして、村は何組か結婚しては子供を産み世帯を増やして、村から町へとランクアップを果たした。
とは言え、配給方法は何も変えていないがな。
そろそろ一揆とかがくるかな?
「旅人はいるか!!」
「どなた…おおこれは、町長や若者総出でどうしたのですかな?」
「おお、これは神父様。旅人は居ないか?」
「旅人様でしたら、旅の商人の元へと向かいましたが…。」
「そうか、では旅の商人の元へと伺おう。」
「何かお急ぎですかな?」
「そんな所だ…では皆の者、広場へ向かうぞ。」
町長と若者総出での訪問か…こりゃ、一揆か追い出しだな。
ああ、そうそう、教会には不在時に起動する高性能の盗聴器を教会の真ん中らへんに仕込んであるので、不在時のやり取りというか愚痴は全部回収済みだ。
因みに相当うっぷんが貯まっていて、そろそろ弾けそうな感じではある。
「おや、どうかしたのですかな?」
「いや、こちら側としてはなんでもないが…。」
俺は教会側に親指を向ける。
恐らくぞろぞろかどすどすかは分からないが、それなりの人数の気配を感じる。
「あちら側では、そろそろ俺を見つけて集まってくるようだぞ。」
「…何かやらかしたんですかな?」
「恐らく、昔からの配給方法に文句を言いにくるんじゃないかな?」
「はあ…こんなに豊かな町になったのに、まだ配給をしているんですか?」
「少なからず飢えている者を助けているだけなのに、何故文句を言われなきゃならないのかね?訳が分からないよ。」
町長が俺を見つけて接近してくる…と同時に若者が周りを固めてくる。
俺は旅の商人から距離を置き、町長と対峙する。
周りにはなんか不満気な若者がいっぱいだ。
「これはこれは、町長と若者達…何か用ですかな?」
「旅人殿…いや、旅人よ。お主には物資配給の面で確かに世話になった…が、もうやめにせんか?」
「止めるとな?まだ、この町には飢えている町人が居るではないか。」
「…貴方は何も知らないのですな。その物資を横流しにして、がらの悪い奴らがこの町に蔓延っているのを。」
まあ、町だからね。
人数が多ければ多いほど、何かしら邪な奴らが増えてくるよな?
だから横流しみたいな行為が増えてくる。
それを取り締まるのは町側の責任では?
「それで、旅人の俺にどうしろと?」
「まだ被害が少ない内に、この町から出ていってもらいませんか?」
「じゃあ、もう配給しなくて良いんだな?」
「ええ、もう十分です。貴方はこの町に大いに貢献してくれました。」
「分かった…じゃあ、早めに出ていくよ。」
「出ていってくれますか…!!それは良かった、これで町にも平穏が訪れます。」
平穏って言っても、この一時的の様子だがな。
この判断が今後、町にどんな影響を及ぼすのか…何も考えてないような様子だ。
まあ、勝手にどうにかなってくれや。
俺は盗聴器を回収に教会へと戻った。
「戻ったぞ。」
「お帰りなさいませ、今回は何かありましたか?」
「相変わらずの品揃えと異種族が二匹だ。」
「つまり、その異種族以外は買われてないと?」
「ああそうだ。もう少し品揃えがマシになってくれれば、配給の種類も増えるというのに。」
一応、旅の商人が来る度に肉袋と野菜袋の種類を変えているが…栄養バランス的にほとんど変わらない。
「おおそういえば、町長様と若者達にはもう会われましたか?」
「もう会ったぜ。」
「どのようなことを申していましたか?」
「もうこの町は十分に発展した、もう配給の必要性は無いから…とっとと出ていけと。」
「…つまり、この町から出ていけと言われたのですか!!」
「そうだ、あまりにも長居し過ぎだから出ていってくれとはっきり言われたよ。」
まあ、町的にはお金を納めていけばまた別の道があったようだけども…あまりにも長居が過ぎるから出てけと言われました。
「…そうですか、寂しくなりますね。」
「という訳で、荷物を取りに来た。」
「はぁ…荷物ですかな?荷物らしき物は…ああ、真ん中にそんな物を隠していましたか。」
ずかずかと教会の真ん中に向かって、床板を取って盗聴器を回収した。
はい、これで荷物回収完了。
長らく世話になったな、この教会。
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