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すべては、十四のあの夜に体験した不思議な出来事からはじまったのだ。
そして、いつのころからだろう、その奇妙な符合に気づくようになったのは。
たぶん、メジャー・デビューのいくらかあとだったように思う。ライヴ前、着替えとメイクを終えて覗き込んだ鏡のなかにある姿は、なんだかあの夜の彼のそれに似て見えた。最初は、無意識に似せているのだと思った。彼は、決して色褪せることのない俺のカリズマだったから。
けれども日々が過ぎるに連れて、鏡のなか、そしてビデオやテレビの映像のなかで、俺の姿はどんどん彼に重なっていった。プラチナとブルーのメッシュの髪、左耳のサファイアのピアス、精緻なアンドロイドのような彫りの深いメイク、自分でデザインもする青と黒を基調としたチャイナドレス風の衣装、もちろんプレイ・スタイルやサウンドそのものも。どこまでが自分の意思で、どこからが運命だったのか。答えはたぶん永遠に出ないのだろうと思う。俺は、手に入れた夢をしっかりと抱いて、仲間たちと日々ライヴをこなしてゆくだけだ。
最後までドレッシング・ルームに残っていた俺を、ヴォーカルのやつが呼びに来た。今夜も極上のトリップのはじまりだ。
その昔、俺の体験を真っ先に真摯に受け止めたこいつは、鏡のなかで見返す俺に何か言いかけ、それからちょっと虚を衝かれたかのように息を呑み、やがて純粋な称賛の笑顔になって、言った。
「すげぇ、カッコいいじゃん」
“MIDNIGHT SURFACE”
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