MIDNIGHT SURFACE

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 彼をはじめて見かけたのは、S町のライヴ・ハウスだった。  僕はそのころ停学を喰らって二日目で------おとなしく家にいるのは嫌だが、地元で遊んでバレて禁足日数が増えるのもちょっと、というので隣町くんだりまで出かけてゆくような、どうしようもない十四歳だった。  正も邪も併せ持つ、というよりもどっちつかずの、十四歳というのはそういう歳ごろだ。巷では中学生の犯罪が溢れ、僕たちは一様に大人たちから敬遠されがちだったし、僕たち自身も悪の道に足を突っ込みつつある、という“ふり”をするのがある種のステイタスだったのだ。  けれども、実際に犯罪に手を染めている奴なんて、周りにはいない。遊び半分の万引きとか喫煙とか、ちょっとした小突き合いなんかは、僕らのなかでは犯罪のうちになど入りはしないし------大人たちの意見は違うかも知れないが------そんな些細な遊びさえやったことがない奴は、当然ながら弾き出される。そういうクソ真面目で臆病な連中は異端だから冷遇されるし、一日の大半を過ごす(過ごさねばならない)学校という名の牢獄で、なんでわざわざ好き好んでイヤな目に遭わなきゃならない ? それでなくとも面白いことなど何一つないのに。  ともあれ僕は、親にも世間にも学校にもあり余る不満を抱えた、ごく普通の十四歳だった。  停学になったのは、ゲーセンで喧嘩に巻き込まれたせいだ。そのとき僕は何人かのツレと一緒で、そのなかの誰かがよその学校の誰かにガンを飛ばしたの飛ばされたので小競り合いになったのだ。僕らはもちろん仲間同士で結託したし、ちょっとしたストレス発散のつもりだったのだが、たまたま近くをうちの学校の教師たちが巡回していたのがまずかった。しかもその中に僕らの担任がいたのがとどめだった。  僕たちは 等しく三日間の停学を喰らい、登校の際には反省文を提出することになっていた。かったるいこと極まりない。
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