すごろくの恋

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 外から煌々と照らされて、明かりを消しても部屋はうっすらと見えるものだと、越してくる前は思っていた。いくら都内でも通りに面していなければ案外夜は暗いのだ。  サイコロを振る。ヒトマス進む。  ごそごそとシーツが擦れる音で、私は重い瞼を半分開ける。 「イズミ、起きたか」  夜中、近くの工場に入っていくダンプが築三四年のアパートを揺らす。六畳のワンルームはサーチライトに照らされ、半袖にトランクスを穿いている彼を映した。 「ん……タクさん、今何時?」 「もうすぐ四時かな」 「今日は早番なの?」  ゆっくりと私は布団から身を起こす。「いいよ寝てて」と促されるも、ううんと首を振った。 「朝ご飯は?」 「早く行って廃棄もらうから大丈夫。吸っても?」  こくん、と目をこすりながら頷く。それを見てタクさんはライターを鳴らし、咥えたタバコに火を付けた。 「電子にしないの?」 「あー、物足りなくて」 「そう」  着ていたキャミソールの肩が落ちていることに気付き、かけ直す。 「聞かないでいいよ」 「んー?」  薄暗くて青っぽい部屋に、吐かれた煙がじんわり広がる。 「たばこ」 「だって聞かないと怒るじゃん」 「っ、それは、ちょっと前の話で……」  フタマス戻る。  去年この部屋に三回目にきたとき、私はタクさんに向かって吸わないでと言った。「ここ誰の家だと思ってるの」と無表情に返され、それ以来すっぱり決まってしまった。  タクさんの上がり。私はまだ、サイコロを振っている。 「もう言わないんだ? 吸わないでって」 「い、言わないよ」  布団の端に立て膝をついて座る、広い背中に後ろから抱きつく。 「ふうん」
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