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Day 12. ふわふわ(ほのぼの系)
フランクフルトが落ちている。
「何だろ……?」
屈んでジッとのぞき込むと、ウインナー部分に細かな毛が生えていた。どうやらフランクフルトではないらしい。
となると、これは何だろう?好奇心に負けて、落ちていたそれを拾い上げた。
持ち手の部分は、フランクフルトの棒より軽い感じがする。茶色じゃなくて少し黄緑色をしているし、もしかして植物だろうか?
ウインナーの部分はどうだろう。恐る恐るつついてみると、ちょっと固めだけど、なんだか手触りが癖になる。
痛くなったり、痒くなったりもしない。これなら大丈夫かな、と手のひらで優しく握ってみる。にぎにぎ。
うん、やっぱり気持ちいい。そう思ったのも束の間だった。
「わあぁぁぁ?!」
突然、ウインナーからふわふわが飛び出してきた。ふわふわの勢いは止まらない。ウインナーの中にこんなに入っていたのかと疑いたくなる量のふわふわが溢れてくる。
「はわわわわわわわ」
ふわふわは、風に乗って飛んでいく。手元に残ったのは、裂けて萎んで、もうウインナーには見えない何かだけだった。
予想外の出来事に、呆気にとられた。心臓がまだドキドキしている。
結局、これの正体は分からなかった。だけど、ふわふわが飛び出すこの感触は、なんだか病みつきになりそうだ。
「また落ちてないかな、ふわふわ」
笑い出しそうになるのを必死にこらえて、その日はスキップで家に帰った。
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