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真希ちゃんの旦那さんの愚痴が一通り終わると、予想通りに葵くんの話を振られた。私たちが付き合うようになった経緯にところどころ関わっていたせいか、こうして定期的に状況を聞いてくる。
少し悩み、誕生日プレゼントのことを相談した。
『へぇ、篠原君って早生まれなんだ。意外』
さすが母親というべきか、目の付け所が違う。
『大人っぽいのにね。大学生にもなったら関係ないか』
「真希ちゃん。私はプレゼントに悩んでるんだよ」
『なんでもいいんじゃない?』
「ひどい……」
そんな投げやりに答えることないのに。そう思えば、違う違う、と慌てた声が聞こえてくる。
『花ちゃんから貰うものなら、なんでも喜んでくれるよってこと』
「えぇ……うん……」
言いたいことはなんとなく分かる。私だって、葵くんから誕生日プレゼントを貰ったらなんだって嬉しい。けれど、求めているのはそういうことじゃなくて、その「なんでも」の部分に困っているのだ。
『いっそ、私をプレゼント、とかどうかな』
「もう酔ってるね?」
『いいじゃん。私はやったよ』
夕飯のおかずを摘まみ上げたまま固まった。
「え、旦那さんに?」
『うん。めちゃくちゃ引かれたけど』
「それを私に提案しないでよ……」
『だって最近のことだもん。花ちゃんと篠原君の年齢なら全然いけるでしょ』
何がいけるのか、どこまで本気なのか分からないけれど、それは問答無用で却下だ。そんなことをして、もし私も葵くんに引かれてしまったら恥ずかしくて生きていけない。
『まぁ、身体のプレゼントじゃなくてもさ』
「悠希くんそこにいないよね?」
『いないよ。だからね、物に拘らなくてもいいんじゃない、ってこと』
「例えば?」
『彼が喜んでくれそうなことをする』
「また難しいことを……」
『形に残るものって、後々めんどくさくなったりするよ』
なんだか重い言葉を頂いてしまった。若い頃に結婚して、ずっと旦那さんと一緒にいる人の言葉だと思うと感慨深い。
酔っぱらった真希ちゃんがだらだらと同じ話をし始めたところで、もう遅いからと通話を終えた。そっと息を吐き、中途半端に食べ残している夕飯の皿を見つめる。
喜んでくれそうなものって、なんだろう。これといって趣味もないようだし、子供好きとはいってもそれ関係で喜びそうなことなんて全然思いつかない。なら私に関すること……と思い、再び息を吐く。私がしてあげられることなんて、たかが知れている。
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