1.〔私〕ダイキライ

1/1
前へ
/21ページ
次へ

1.〔私〕ダイキライ

嫌いだ。こんなグループ。 東京のお洒落なカフェで、私はTwitterにこんなツイートを書き込んだ。 『すとぷり、いなくなればいいのに。消えて。』 すとぷりとは、ネットでゲーム実況・歌などを投稿したりしている6人グループ。 何が面白いのか、10代、20代の間で絶大な支持を得ている。 私は彼らが気に入らなかった。 ツイートを見ていても面白いと思わないし、動画も友達に勧められて見たけど、能天気によく分からない会話を繰り広げる。 そんな事を思いながら『ツイートする』のボタンをタップしようと指を伸ばす。 「…大丈夫ですか?」 ふいに、そんな声が聞こえて顔を上げる。 目の前には1人の若い男性。 年齢は20代前半くらいだろうか。 黒髪に紫のメッシュを入れている、痩せ型の人。 彼は心配そうに、でも真っ直ぐ、私に向かって口を開く。 「顔色悪いし、指が震えてるよ。店員さん呼びましょうか?」 何言ってんの、この人。 心の中でそう馬鹿にしながら視線をスマホに落とすと、『ツイートする』のボタンから数ミリのところで止まっていた指が確かにかすかに震えていた。 え? なんで。どうして。 怖くなんかない。 アンチなんて今まで何件も投稿してきた。 なんで震えてるの。 このままいたらおかしくなってしまいそうで、勢いよく立ち上がる。 「えっと…大丈夫ですか?」 未だに心配そうな顔をしている男性に、無駄に明るい笑顔で返す。 「大丈夫です!心配かけてすみません。特に何の問題も無いんで!」 そう返事をして、急いでお金を払い、カフェを飛び出した。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加