第1章 僕の場合

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 もうそろそろ、僕の中で何かが爆発する。  そう思い始めていた頃、彼女が左耳のイヤホンを外した。  すると、何があったのか、僕の目を真正面に見据えて、尋ねてきた。 「これを弾いてる時、どんな気分だった?」 「え?」 「楽しかった? 気持ち良かった? それとも、嫌……だった?」  と。  嫌な訳は、勿論ない。  現状で僕が知っている曲の中では、何より好きで、弾いていて一番充実もしていたからだ。  そう答えると、彼女は表情を一変。  穏やかな笑み浮かべながら、スマホを僕の手の平に乗せた。 「きらきら、ふわふわ——音が、生きてる。とっても素敵な音」 「音が…?」 「うん。あぁ、これは私の勝手な表現なんだけどね。でも、そう見えちゃうなぁ。君の指が叩いた鍵盤から、弦を伝って、空気を通して、幸せな音が届いた」 「……そう、ですか」 「信じてない?」 「あぁいえ、そうではなく……演奏はアレなものですが、僕、それを弾いている時、とても楽しかったから。大好きな曲を、僕の音で聴いて貰えてることが、嬉しかった」 「——それは、とっても強い武器だよ」  私にはない、とっても強い武器。  そう付け足して括って、彼女はまた次の曲を所望した。
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