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バスは、また次のバス停を過ぎている。
今度は、また少し短めのドビュッシー『小舟にて』。
外で水が跳ねているのを見ていて、何となく次はこれだと思っていたものだ。
かけ始めて少ししたら、また彼女は左右に揺れ始めた。
長い髪も、ひらりとした薄い羽織物も、一緒になって楽しそうに揺れている。
本当に、音楽が好きなんだなあ。
ただ才能があるから、才能があってお金もあるから、と天上に入れられる人も少なからずいるらしいが、彼女に限っては、本当に好きだからやっているんだ。
聴くのも、弾くのも、楽しめるから、天上にいるんだ。
何だか、羨ましいな。
僕は確かに、クラシックが大好きだ。
けれど、上を上をと意識するような気概は、正直言ってない。
自分の満足いく到達点まで辿り着ければ良くて、そこに他人の演奏との比較はない。
僕の気が済むように出来れば良いだけなのだ。
ちょっとくらい——彼女ともっと言葉を交わせば、何か少しくらい変わるかな。
新しい刺激とか、あるのかな。
そんなことを思っている内に、バスは次のバス停へ。
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