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「――って、クラシック分かるんですか?」
「うん。私、音大生。そういう君は高校生だね?」
制服を着てれば、そりゃあ分かるか。
「はい、二年です。音大……もしかして天上ですか?」
「よく知ってるね。まぁ、このバスだったらそれくらいしかないか」
そう言って、彼女は楽しそうに笑った。
特にピアノに力を入れている音大である天上は、文字通り貴族学校のようなもの。下手をすれば、安い家が一件建つような学費がかかる。
奨学金の制度もあり、それを利用して通う手もあるらしいのだが、生半な実力では、その資格も得られない厳しさ。
その天上は、この一つ前の駅が最寄りである。
そこを間近に控えたバスの窓の外は、これでもかというくらいの大雨。
ふと、彼女が僕の横から手を伸ばして、その細い指先で窓をなぞった。
丁度、彼女の目線の高さだ。
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