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「弱くならないものだね」
「梅雨の時期ですから、仕方ないですよ。朝じゃないだけ、まだマシだと思わないと」
「前向き、良いね。まぁ、確かにバスも止まってるもんね。これが行きだったら――考えたくないかな」
「遅刻は確実ですね」
お互いに、だけれど。
どこまで乗っていくのか尋ねたところ、彼女はこのバスの終点駅である駅――僕も降りる所までらしい。
今までは、乗って来た時は見ていても、どこで降りているかなんて見たことがなかったから、知らなかった。
言い方はあれだけれど、特に気にも留めなかったのだ。
しかし彼女は、僕がそこで降りることを知っていたらしく「一緒だね」と付け足した。
そりゃあ、僕が特別興味を持たなかっただけで、毎夕見ていたら、いつの間にかどこで降りるかは知ってもいよう。
「しかし、天上を出たばかりですから、まだまだ先は長そうですね」
「いくつあるっけ。五つ?」
「ですね。普段はあと十五分くらいなのに、これだと――」
「結構な時間になっちゃいそうだね」
信号が変わる度、一台、二台くらいしか進んでいない。
これでは、あとどれだけの時間がかかるか、分かったものではないな。
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