第1章 僕の場合

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「弱くならないものだね」 「梅雨の時期ですから、仕方ないですよ。朝じゃないだけ、まだマシだと思わないと」 「前向き、良いね。まぁ、確かにバスも止まってるもんね。これが行きだったら――考えたくないかな」 「遅刻は確実ですね」  お互いに、だけれど。  どこまで乗っていくのか尋ねたところ、彼女はこのバスの終点駅である駅――僕も降りる所までらしい。  今までは、乗って来た時は見ていても、どこで降りているかなんて見たことがなかったから、知らなかった。  言い方はあれだけれど、特に気にも留めなかったのだ。  しかし彼女は、僕がそこで降りることを知っていたらしく「一緒だね」と付け足した。  そりゃあ、僕が特別興味を持たなかっただけで、毎夕見ていたら、いつの間にかどこで降りるかは知ってもいよう。 「しかし、天上を出たばかりですから、まだまだ先は長そうですね」 「いくつあるっけ。五つ?」 「ですね。普段はあと十五分くらいなのに、これだと――」 「結構な時間になっちゃいそうだね」  信号が変わる度、一台、二台くらいしか進んでいない。  これでは、あとどれだけの時間がかかるか、分かったものではないな。
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