第2章 私の場合

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 学校を出てすぐのバス停に辿り着くと同時に、バスが丁度入ってきた。  一拍遅れて、古臭く軋むような音を鳴らしながらドアが開くと、重い足取りで車内へと乗り込む。  前の席は不安定に揺れて怖いから、いつも通り後方の、二人掛けの席は窓際へ。  ほとんど人が居ないことを確認して、私は隣の席に荷物を降ろした。  多くなって来れば、持ち上げればいい。  バスが動き出して少しすると、大きな溜息が漏れた。  心の底から、身体の内側から溢れて零れた、大きな大きな『不満』だ。  結局、私も唯の人間。一般人なのだ。  皆が思うようなことを、同じように思ってしまっている。  それでも周りのことが気になって溜息が漏れるのは、やっぱり私の性格がちょっと曲がっているからだ。 (ごめん…)  そう心の中で友人に伝えてみたけれど、もう手遅れだった。  そしてまた、溜息が零れる。  するとふと、前の席から一風変わった空気を感じて、顔を上げた。  学校指定と思しき、エンブレムの入ったカバンを脇に置いた、コートとマフラーに身を包んだ男の子。  両耳にイヤホンを着けて、何やら音楽を聴いているらしいのだが—— (気持ち悪い——気持ち悪いくらいの、赤黒さだ)  血が昇る赤と、前が見えなくなるという意味の黒を合わせた、『興奮』の色だ。 (何でこんなに……)  第一印象としては、変わったやつ、程度のものだった。
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