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「明日——明日、必ず決断します。今日、本気で一度考えてみます。それでもし、私が勇気を持てなかったら……」
「ええ。私は、貴女の意見を尊重します」
「……ありがとう、ございます」
深く深く。
これ以上ないくらいに深く頭を下げて、私は部屋を後にした。
すると、まるで「待ってたよ」とでも言わんばかりに、友人が声を掛けて来た。
いつものように、けれども少し薄い、『緊張』の色を纏いながら。
「今日、帰り一緒しない? 駅前に、新しいクレープ屋が出来たって友達が——」
「ごめん…!」
はっきりと断ると、友人は瞬間、少し寂し気な表情を浮かべた。
今までなら、それを見送って終わっていたところだ。
しかし、今日だけは。
「ちょっと、やらなきゃいけないことが出来ちゃった。だから、ごめん」
ちゃんと言葉にすると、友人の色が変わった。
複雑でぐちゃぐちゃとした『緊張』の色から、薄く淡い水色は『安心』の色に。
ああ、そうか。
君はずっと——
「分かった。頑張ってね」
「うん。また、明日」
舞踏会以来、一度も言っていなかった言葉。
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