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清潔感のあるこの風貌なら、バイオリンやフルートでも似合いそうである。
と、そんなことを思っている内に、二分足らずの曲は終わりを迎えた。
そして気が付けば、いつの間にかバスは、一つ先のバス停へと辿りついていた。
「一駅一曲、か。急に進み始めちゃったね。勿体ない」
「ご自分のスマホには、音楽入ってないんですか?」
「プレイヤーの方に入れてるんだけど、今日に限って忘れちゃって。おまけに、スマホに制限かかっちゃってるのよ」
「それは災難。なら、言ってもあと四曲程でしょうから、今日はこのままで」
「ありがと。次、何でもいいからかけて」
分かりました。
そう応じてかけるのは、リスト作曲“エステ荘の噴水”。
超絶技巧の導入部分で、またも彼女はそれを言い当てた。
先のオルゴールには少し驚いたが、もう流石に驚きはしない。
当たり前なのだ。
そりゃあ、これだけの若さなら知らない曲は多くあるだろうが、引き出しは確実に僕より多い筈。
どちらかと言えば、「あ、知ってるんだ」と思う方が失礼だろうな。
そうしてしばらく聴き惚れていると、今度は、膝に置いたバッグの上に指を乗せ、指を滑らせ始めた。
流麗に、繊細に、独立して生きているように速く動く指先。
流石にバスの車内とあって大人しくはあるが、そこに鍵盤があるように、音を鳴らしているように、本格的な指の動きを見せる。
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