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それなのに——
「聴きたいな。君の『音』」
彼女がそんなことを言ったものだから、僕はつい、動画のページをタップしてしまっていた。
君の演奏、と置かなかったことで、彼女は僕の演奏ではなく、僕の鳴らす音自体に興味があるのだろうと思えた。
勝手な解釈だと笑いたければ笑え。ただ、彼女のその言葉が、僕には
「間違いなんて気にしないから、どんな音を鳴らすのか聞かせて欲しい」と言われているようで、自然と少し、心が落ち着いたのだ。
「半年前の、発表会です……動画ですけど、せめて姿は——」
「見せてくれない?」
「——ひ、一人でどうぞ…! スマホ貸しますから。僕は見ません」
そう言って、半ば投げるようにして寄越した。
「分かった。ありがと」
自然と出て来た彼女の言葉に、僕は少しどきりとしてしまった。
ありがとう、か。
断られることを承知で言っていたのかな。
だとすると——何だろう。
あまり、悪い気はしないかな。
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