夕焼けヒーロー

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「つまり、夜はその寒さに耐えられるようにあのような黒いボディに変化させた。それとは逆に、昼の暑さに対しては、氷のような身体に変化させるということだ」 「ああなるほど。この前現われた時は、そこから地球を飛び去るまでの短い時間、その間だけ行動するのも命がけということなんだ」 一方その頃。 「隊長、だめですね。この者、ここ9ヵ月間の記憶がないんです」 「そうか、それなら仕方がないな」 そう言って、隊長は医務室を出ていった。 一緒にいた隊員が話す。 「つまり、9ヵ月前というと、あの夕焼けヒーロー・ナハトが登場した頃と一致する。すなわち、あいつは1人の地球人に取り付いた。そのあと隊長はその身体能力を高く評価して隊員としてスカウトした」 「まあそういうことだ」 「だけど何で人間に取り付いたんだろう。地球を去る時何でその間の記憶を除いたんでしょう」 「色々考えられるな。それより重大発表がある。みんなを集めてくれ」 そして作戦室に隊員達全員が集まった。むろんあの新入り隊員を除いて。 「地球防衛隊は解散する」 隊長の発言に、隊員達は皆、戸惑った。 「隊長、冗談はよして下さいよ」 「冗談ではない。すでに上層部で決まったことだ」 「地球防衛隊では冗談は禁物のはずだ」 副隊長が補足するように言う。 「そりゃそうですけど。だけど一体どういうことですか」 「それは私から説明しよう」 参謀が2人の手下を従えて作戦室に入ってきた。そして説明を始めた。 「これを見るがよい」 手下の1人が大きな紙に描かれた図面を取り出して見せた。 「何ですかこれ」 「何か、地球の上に岩のようなのが浮いていて、その上でヒーローと怪獣が向かい合っているというか」 「元はこれなんだが。おい、あれを」 「あ、はい」 手下が別の図面を取り出して広げた。 「海の上にヨット?いかだ?何か子供が描いた絵みたいだけど」 「これはとある小学生が送ってきた絵だ。そしてこう説明している。海の上で太陽に向かって島が動いていけば、ずっと夕方でいられる、とな」 「ああなるほど、その上でならヒーローが長くいられるってことか」 それを聞いて、他の隊員達も、おお、と歓声を上げた。 「しかし待てよ。地球の自転ってどのくらいの速さだっけ」 「地球の円周の長さは、確か4万キロメートルだったか。昔の人はうまく測ったもんだな」 「いや、メートル法はそういう風に定義したんだろ」 「あっそうか。それでスピードはどのくらいかな」 「1日24時間だからそれで割れば時速が出るだろ」 「あっそうだな。ええと、4万÷24は・・・。1666.666・・・」 「ゲッ、音速をかなり超えてるじゃんか」 「いやちょっと待て、それは赤道上の場合だ。緯度が高いところではもっとゆっくりになるはずだ」 「ああそうだったけ。それならできるだけ遅い方がいいかな。となれば・・・」 「間違っても北極や南極まで行くんじゃないよ。夏はずっと昼間、冬は何日間も夜なんだし」 「ああそりゃそうだけど」 「いやどっちみち大陸が邪魔で海の上は無理なんじゃないか」 「そういやそうだね。それなら空を行くしかないな」 隊員達の話に参謀が割って入る。 「そういうことだ。だからこれなんだ」 参謀は最初に出してきた図面を見せる。 「地球からはるか上空に新たに基地を建てることにした。これが地球と逆向きに移動し、この上でヒーローに怪獣と戦ってもらうということだ」 「だけどヒーローはまだしも、怪獣はどうやって基地の上に乗せるんだ」 「それを我々がやればいいんではないか」 「あっそうか。そうなると地球防衛隊も決して不必要ではないということか。ヒーローと持ちつ持たれつですね」 「空を飛ぶ怪獣は?」 「逃げないようにバリヤーを張ればいい」 「だけどそのようなたいそうな物、実現可能なんでしょうか」 「すでに計画は始まっている。隊員達も新しく募集することにした。よって君達は新基地完成のあとの新防衛隊発足と共に解散だ。新しい就任先については追って辞令を出す」 そう言ったあと、参謀は2人の手下と共に去っていった。 「だけど何で新しい防衛隊を作っても古い隊員を引き継がないんだ?そういうもんなの?」 「ところで、弟の夕焼けヒーロー・リヒトが来てもすぐに正体がばれるんじゃないかな。その辺はどうなんだろ」 それについては誰も答えられなかった。 続きは今のところ考えていません。
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