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「その子が落としていったんですけど。」
王子は受け取ったガラスの靴をマジマジと見つめました。
「手掛かりはこれだけかぁー。てか、ぶっちゃけぇ、こんだけじゃ探せないぜぇ。」
言いながら、ガラスの靴から顔を上げると、王子はニヤッと笑いました。
「そぉぅだ!良い事考えたぁ。」
門番は嫌な予感がしました。
というのも、王子は女遊びに悪知恵を働かせて、みんなを困らせてばかりだったからです。
「こん靴持ってさぁー、『この靴にぴったり合う足の女性と結婚するよー』っとか言ってぇ、街中廻ってぇ、ナンパしまくろうぜぇ!」
ほらみたことか!門番は嘆きました。
「えー、嫌ですよ。」
「なんだよぅ。おめー好みの巨乳ちゃんも、ちゃんと探してやっからよ。」
なんて下品な王子だ、と門番は思いました。
「じゃあ、仮にですよ、それで探して、全然王子のタイプじゃない女がこの靴に足ピッタリだったらどうするんですか?」
「そん時はぁ、こん靴、叩き割りゃあいいじゃん。」
出た!
このガラスの靴が、あの子にとって大事なものだったらどうするんだ、と門番は思いました。
門番は、王子の女遊びの為には何でもする非情さに、寒気すら覚えました。
「えー、ひでぇーなー。」
「つべこべ言うなよぅ。じゃあ、明日それやるからぁ。人数集めとけよぅ。」
じゃあな、と背中越しに手を振りながら、王子はお城の中へと戻っていきました。
王子が去った後、静けさの戻った大扉の前で門番はさっきの騒ぎを思い返しました。
「さっきのキレイなドレスの娘も王子との結婚目当てかな?だとしたら、明日のナンパで見つかるかもしれないな。でも・・・。」
王子の女の趣味を知っている門番は残念だと唸った。
「だとしたら、かわいそうだなぁー。王子は不幸そうな女が好きだからなー。頭から灰をかぶってるような、虐げられている子がタイプだからなー。さっきのようなキレイなドレスを着てる子は選ばれないんだよなー。あーかわいそう。」
-おわりー
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