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憧れの舞踏会に出られる、その期待に胸を躍らせながら、シンデレラはお城の正面玄関の大扉へ急ぎました。
大階段を駆け上り、息を弾ませながら大扉の前に到着したシンデレラに、門番が声をかけてきました。
「ようこそ、お城の舞踏会へ。」
深呼吸を何度か繰り返し、シンデレラは呼吸を整えました。
「私、お城の舞踏会へ参りました。」
両手でスカートの裾を摘まみながら、シンデレラは軽い会釈をしました。
「はい。歓迎いたします。では・・。」
門番は微笑みを浮かべながらシンデレラを見つめ動きを止めました。
何かを待っているようです。
シンデレラは、何を待っているのかわからずに、もう一度スカートを摘まんで会釈をしました。
門番は少し困って、咳払いの後、シンデレラに言いました。
「いや、あの、招待状を。」
門番は微笑みを崩さず、動きを止めたままシンデレラが招待状を出すのを待ちました。
あ、招待状ね、とシンデレラは慌てて、ポケットに手を入れました。
「あ、あれ?」
途端にシンデレラの動悸が早くなりました。
確かにポケットに入れたはずなのに、招待状がない。
シンデレラは焦って、ドレス中のポケットというポケットに二度三度と手をツッコミました。
「どういたしました?お嬢様。」
門番は微笑みに若干の苛立ちを滲ませ始めました。
「あ、それがその、招待状を落としちゃったみたいで・・。」
シンデレラのその言葉を聞いて、門番はガラッと態度を変えました。
「はぁ~、いるんだよね~。」
「え?」
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