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これは同僚のNさんから聞かせてもらった話です。
NさんがT県にある女子校に通っていたときのことですから、もう十年近く前の話になります。当時Nさんは、バスと電車を乗り継いで通学していました。Nさんの趣味はUFOキャッチャーで、UFOキャッチャーで獲ったキャラクターのキーホルダーを鞄にたくさんぶら下げていました。
ある日、いつものように駅の改札を出たところで、
「これ、落としましたよ」
と背後から声をかけられました。
振り返ると、男子高校生がキーホルダーをNさんに向けて差し出していました。
ピンクのストラップを頭につけた、小さなクマのキャラクターのぬいぐるみ。確かに、Nさんが鞄に付けていた物の一つでした。
「あ、ありがとうございます」
お礼を言って受け取ると、
「どういたしまして」
と、男の子が爽やかに微笑み返す。その笑顔の格好良さに、Nさんは顔が熱くなるのを感じました。連絡先を聞きたいと思ったそうですが、恋愛には奥手だった彼女は結局、名前も聞けずに別れてしまいました。
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