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プロローグ
犯人、うちの学校の生徒かもしれないらしいぞ。
十三人も殺した犯人が?
友達から聞いたんだけど、信憑性が高くて、多分本当だと思う。
本当? でも教室で争った跡があったとか噂で聞いたけど、犯人何人もいたの?
それが一人の犯行らしい。
絶対無理だと思うけど。それデマ情報じゃないの?
いや、本当なんだって! まだ未成年だからどうなるかわからないって話だけど、近々発表されるかもしれない。
何が?
俺から聞いたって絶対に言わないでくれよ?
いいけど、何?
その十三人も殺した奴。うちの生徒が自首したらしい。
…………本当?
ああ、しばらく学校休みになるかもしれないな。
その生徒の名前は?
「はぁー」
眉をひそめてため息を吐いた。
「朝一番にため息なんてどうしたんですか先輩。もしかして前に言っていた夫婦喧嘩ですか? 夫婦喧嘩を職場に持ち込まないでくださいよ?」
手に持っていた記事が勢いよく机に叩きつけられる。
「冗談ですって。そんなにかりかりしないでくださいよ! その記事は例の未成年殺人事件じゃないですか」
「どうも納得できないんだ」
「解決したのにですか?」
「知らないと思うが、三年前にも似たような殺人未遂事件があってだな、その時も現場にいた未成年の犯行となっている。まあ、大きな話題にもなっていないから、記事になってすらいないが」
「まあ、最近は未成年の事件が増えてますからね。SNS関連が特に」
「状況がそっくりなのだ」
「そっくり?」
「……二人共、現場で倒れているところを見つかり『自分がやりました』と自首をしているのだ」
「なるほど。確かに妙ですね。冷静すぎるというか」
「いや、自首した後が問題なのだ。あの時も動機や凶器を証言した後だった。急に冷静さを失い、『自分はやってない』と騒ぎ出したのだ。取り調べをしていた私が呆然とするほどな」
「まだ未成年ですし、怖くなったんじゃないですか?」
「本当にそう思うか?」
「いいじゃないですか。解決したことなんですし。そんなこと言ってたら、二十四時間三百六十五日ずっと働いても、仕事なんて終わりませんよ。ほら今日もやる事だらけなんですし」
何枚も束ねられた書類を眺めると、紙コップに入ったホットコーヒーを飲み干し言った。
「誰かが不幸や絶望を感じるような虚偽がまかり通ってはいかんよ」
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