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完敗です。私が犬なら、お腹晒して降参のポーズをとっているくらい。ぼふんって擬音が出そうな勢いで瑛士の胸に飛び込んで、ぎゅっとしがみついた。
「瑛士に翻弄されまくっている」
悔しさの滲んだ口調でそう言ったら、抱きしめ返された。
「繋ぎ止めようと努力しているだけだよ。ね、彩乃」
「ん……」
呼びかけられて顔を上げて、唇が合わさったら舌が入り込んだ。今度は深い口付け。ぴちゃぴちゃとわざと音を立てて、舌が絡み合う。
さっきしぼんだ欲望が、あっという間に膨れ上がる。私、もっと欲しがってもいいかな。そう思ったそのタイミングで、瑛士に聞かれた。
「食べていい?」
この場合、食べられるのは私なんだろう。だから瑛士の唇を甘噛したあと顔を離し、聞き返した。
「私も、食べていい?」
秘技、質問返しだ。眼鏡越しの瑛士と目があって、ニヤリと微笑まれた。
「いいよ」
情欲を隠さない、雄の顔。腰のあたりがぞくんとした。そのまま二人、もつれ合うようにリビングに入り、ソファーになだれ込む。耳たぶをいじられながら舌を絡ませる口付けを交わし、力がすっかり抜けてしまう。
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