番外編1. 春の試飲会

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 なんてさらりと、当たり前のように言う。でもそれに騙されてはいけない。常時置いてある酒の種類が豊富でしかも角打ちをやっているここは、お酒好きの間では有名なお店らしい。先日なにかの拍子でネットで検索したらそんな評判が載っていて、びっくりすると同時に納得した。酒造メーカーさん達も宣伝仕掛けるのに、この店は外したくはないんだろうな。 「このお店でやるんですか?」 「そうそう。そこの蔵の酒を何種類か営業さんが持って来て、解説するんですよ。今回は秘蔵の大吟醸も持ってくるらしくてね」 「へぇ」  大吟醸至上主義ではないけれど、そんなことを言われてしまうと俄然興味が出てくる。 「なんか面白そう。ね、瑛士」 「うん……」  珍しく瑛士の反応が鈍い。どうしたんだろうと思って隣を見上げると、考え事をするように説明してくれた。 「来週、泊まりの出張があるんだ。木曜に行って金曜に帰ってくるから、時間が間に合うかなと思って」 「出張。珍しいね」 「うん。今回、俺が企画のまとめ役だったからね。客への最終説明は一緒にやってくれって営業に言われて」
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