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「ジャケット、脱ぐよ」
お伺いを立てられたのでうなずくと、瑛士は私の目を見つめたままジャケットを脱ぎ、ソファーの端にそれを放り投げた。そしてまた口付けられる。
「ネクタイは?」
次を聞かれ、自分の希望を口にする。
「ゆるめる、だけ」
「そう」
瑛士が私から視線をそらさずネクタイに指を掛け、くっとそれを斜めに下ろす。
「……狙いすぎ」
わざとしかめっ面をしてそう評すると、ニヤリと笑われた。
「でも、好きでしょ?」
ええ、めちゃくちゃ好物ですとも。ああもう全てに負けが込んでいる。
悔しくて、彼のネクタイを掴むと、自分に向かって引っ張った。そのまま覆いかぶさる瑛士を受け止めて、また口付ける。
「ふぁ」
彼の舌を唇で挟み込んで、扱き上げた。唾液をすすり、舌と舌を絡み合わせ、口の全部がだるくなるくらい堪能する。唇が離れ、一息つく頃には、私はソファーに身を投げだしていた。
「彩乃、全部脱いじゃおうか」
耳元でささやかれ、少しだけ我に返る。あれ、ここってリビング。それに照明が一番明るい状態だ。
「駄目……。明るいとこ、嫌。瑛士の部屋に行く」
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