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「えーっと、ちょっと待って。なんか予想外で」
「え?」
うつむくだけでは飽き足らず、彩乃がさらに手で顔を覆う。耳だけが髪の毛からのぞき見えるが、なぜか真っ赤になっていた。って、え?
「……手紙、私も持っている。なんならファイルにきちんと保管して、すぐに取り出していつでも眺めることが出来るようになっている」
「え?」
思いもかけない告白に思考が停止して、ただぼんやりと彩乃を見つめた。すると勢いよく顔が上がり、涙目で真っ赤な顔をした彼女が俺を睨みつける。
「だって文通していたんだよ、私たち! 大切に保管なんて、するに決まっているよ! 捨てられないよ!」
あ、逆切れだ。
お互いにしばらく黙ったまま見つめ合って、それからどちらからともなく笑い出した。
「俺、もしかして考えすぎだった?」
訊きながら彩乃の手を引いて、今度こそベッドの上に誘導する。二人して寝ころんだら、今度は彩乃の方から抱きしめてくれた。
「まさかそこで愛の重さを量ってくるとは思わなかった」
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