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人それぞれなんだね。って感心したようにつぶやきを足すので、同意する代わりにキスをする。彩乃は満足そうに目を細めると、ぽふんと俺の胸に顔を埋めた。
「手紙を大切に保管して捨てようなんて思いもしなかったって、やっぱり私にとっても瑛士は特別な存在だったのかな」
「そこ、疑問形なの?」
「だって、当時はこんな風になるとは思いもしなかったわけじゃない? 初恋でもない、むしろ黒歴史だった文通が、まさかこんな大切な恋愛に変化するなんて、人生なにが起こるか分からないなぁって」
「初恋か……」
俺の場合、基本が受け身な性格だったせいか、自発的な初恋がいつで相手が誰だったかなんて正直覚えていない。自分を変えてみようと思ったところから次第に女の子に声を掛けられるようになり、その中で気が合いそうな娘と付き合っては別れるを繰り返していた。そう考えると俺の初恋は最終的に彩乃になるのだけれど、今それを主張したからどうということではないのでやめておく。こうして出会えた幸運に感謝するだけだ。
「ところでさ」
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