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「彩ちゃんはこの店で飲んだ酒で美味いと思ったのを語ってくれれば十分だから。それじゃあ」
あとは任せたという感じに会釈して、今井さんが去ってゆく。
「いやどれも全部美味しいんですけど」
後ろ姿に向かってつぶやいたら、今度は白石さんと鳴瀬さんの二人に吹き出された。
「本当に、お酒が好きなんですね」
「あ、いや、はい……」
初見で酒好き認定されるというのも、なんだか面映ゆい。
「単純に、飲むのと食べるのが好きなだけなんです。だから銘柄とか全然覚えないし、蘊蓄も語れないですし」
「でも素敵です。お酒に興味はあるんですが、それよりもつい甘い方に行っちゃって」
ふふっと笑う彼女の表情が柔らかい。そしてそれを眺めている鳴瀬さんも、いい表情だ。そんな二人に、ああと思った。『元』担当者さんと二人で試飲会に参加って、明らかに仕事ではないよね。なんて、わざわざ口に出して確認はしないけれど。
「甘いのってスイーツですか?」
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