番外編1. 春の試飲会

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「そうですね。飲みに行くより夜パフェの方が心ときめく、みたいな。でもだからこそ、お酒にちょっと憧れます。知りたいなって思うんですけど、なにから飲んだら良いのか分からなくて」 「そんな時のための試飲会ですよ」  そういって笑いかけて、お酒の話で場を繋ぐ。甘いの好きなら、お酒も甘口から試してみるのはどうでしょうかね? とか、辛口には辛口の、甘口には甘口の良さがあるんですよ! とか。  酒好きと紹介されるには本当に浅いレベルの会話だけれど、人と知り合うにはこのくらいでも十分だ。話をしながら順々に試飲をして、本日の目玉の大吟醸に至る頃にはすっかり三人で打ち解けていた。 「大吟醸、さすがに美味しいですね。いくらでも飲めてしまいそう」 「あー、それ危険、危険」  白石さんの感想に笑いながら答えて、また一口飲む。完全に、彼女の酒を愉しむ姿が私の肴になっている。
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